$'s Room - 国内パソコンの歴史

国内パソコンの歴史

ワープロ専用機

ワープロ(Word Processor)は既に死語となりつつあるようです。
テープとかディスクも21世紀以降に生まれてきた人は知らない人の方が多いですからね。
昨今、カセットテープはレトロ回帰ブームで生産が一部復活しているらしいですけど。
(βとかVHDとかPDとかとかとか色々あるけど、大抵は日本メーカーの覇権争いのせい)

それはさておき、ワープロは現在ではソフトウェア(アプリ)としての供給が普通ですが、コンピュータの歴史では専用機として確立していた時代が相当期間あります。
欧米ではコンピュータ登場以前に「タイプライタ」が存在しており、コンピュータの「キーボード」もそこから派生しています。
従って専用ワープロというよりは元々あったタイプライタをソフトウェア化するのみで済みました。

一方日本では「和文タイプライタ」というものもありましたが、これは写植と同じように1文字ずつ拾っていくスタイルでした。
誰でもすぐにできるものでなく作成速度も遅かったため、余り普及しませんでした。
(確か民間資格で和文タイプライタもあった気がする)

この文書作成の難易度による差(主に速度)は、ビジネス業界で特に問題とされていました。
そこで研究されたのが「日本語ワープロ」です。
コンピュータ上で「日本語」という世界に類をみない複雑な言語を使用するのは非常に難しいものでした。
高度な技術を要するため、まずは専用機として発達しました。
(このあたりはNHK「プロジェクトＸ」でも取り上げられていました)

日本語はまず使用する文字が「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「英数字」「記号類」と多岐に渡ります。
このような言語は他にないため、技術的なものは独自開発する必要がありました。
扱うべき文字数は「漢字」が最低でも2000文字程度は必要であり、更にその入力方法や変換方式などの開発が必要でした。
(文字は後にJIS規格としてコード化され、更にそこから他の言語体系も含んだ国際規格へ発展していきました)

そして研究の結果「かな漢字変換方式」が開発されました。
更に既存のキーボードとの融和性から「ローマ字変換」が開発されました。
(黎明期では和文タイプと同じ方式や、多段シフト変換などがありましたが、かな漢字変換方式の方が覚えやすさなどで優れていたため、やがて消えていきました)

また、日本語は「同音異義語」が多く存在するため、その変換を確定する方法も必要でした。
当初は単語単位で変換していたものが、先読み変換ができるようになり、更に記憶容量の増大で「辞書」を持つことができるようになって、「文節変換」が可能となりました。
(同音異義語の問題は現在でもユーザに依存している部分がありますね＞「かくりつ」→「確率」「確立」などネット上でもよく見ます)

このように欧米系言語にはない概念を独自に開発する必要があったため、当初は専用機で対応せざるを得なかったのです。
(ここで培われた技術は日本語以外の言語や携帯電話の漢字入力などにも応用されました)

1990年代に日本語ワープロは全盛期を迎えます。
黎明期には100万円を超えていた価格も、この頃には10万円を切る機種も販売されるようになり、小型化も進んで世間に浸透していきました。
日本には「年賀状」という文化があったため、それに合わせて進化した面もあり、一時期は年間200万台を超える出荷台数でした。

その後、技術の発展によりコンピュータのソフトウェアという形でワープロソフトが開発され、ハードウェアの発展と普及により専用機としてのワープロは衰退していきました。
2000年初頭で各メーカーからの専用機としてのワープロは生産終了となり、更にソフトウェアとしても和製ソフトは数が少なくなり、Microsoft社の「Word」に取って代わられました。
しかし、「Word」は欧米系言語を中心に考えられているソフトであるため、日本語ワープロとしての性能や使い勝手という点では和製のものがやはり優れています。
互換性などが保てるのであれば、日本語ワープロもまだ国内では需要はあると思うのですが、今の日本の企業ではなかなか製品化までは持っていけないのでしょうかねぇ。
(中古市場は一定の需要があるようだし、クラウドファンディングでどっかやるかもね)

なお、機種一覧はまだまだ未完成。
パソコンに比べると資料も少なく、不明点多数だけど見切り発車中。

[シャープ][東芝][沖電気][富士通][ＮＥＣ][日立][キヤノン][松下][リコー]
[横河][三菱電機][ぺんてる][ＪＤＬ][日本タイプ][カシオ][ソニー][ブラザー]
[シルバー精工][エプソン][セイコー][三洋電機][ミノルタ][ユニバック][ニデコ][プラス]