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周辺装置からみる歴史

・そもそも論:コンピュータとは?

コンピュータ(computer)の語源は、「compute」+「〜er」なので「計算する」「〜する人」ということで文字通り「計算をする人」である。
オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)では、1286年には既に人以外の物を対象として定義されていたらしい。
現在のコンピュータの基本となる技術は1930〜40年代に確立したが、手動の計算機との違いを示すため「auto」や「electronic」などの単語をつけて表すこともあった。
(日本語表記で「コンピュータ」はJIS準拠、「コンピューター」は内閣告知準拠でどちらも正しいが、一般的には内閣告示準拠表記で、技術文書ではJIS準拠表記となっているケースが多い)

日本語でも「電子」計算機と呼び、その略称で「電算機」という呼び名があった。
1970年代まではコンピュータは大企業か研究機関くらいにしかなかったため、一般の人々がそれらを区別する必要性がなかった。

しかし1970年代後半になるとコンピュータが一般人でも買えるようになってきたため、その一般名詞としての呼び名が必要になった。
そこで登場したのが「マイクロコンピュータ」(micro computer)、通称「マイコン」である。
意味としては「小型化したコンピュータ」を指す「マイコン」であるが、「マイ」が「my」と重なるため、個人が所有するという意味も重ね持つことになる。
現在では「マイコン」は主に組込用のコンピュータとして本来の「micro」を意味している。

ただ、当初は家庭用として発売されたコンピュータは「ホームコンピュータ」(home computer)などと呼ばれていた。
「マイコン」に変わる「個人所有」を意味する言葉として生まれたのが「パーソナルコンピュータ」(personal computer)という名称である。
当初は「パーコン」という略し方もあったが、和製外来語らしい略され方として定着したのが「パソコン」である。
言葉自体は1972年に登場していたが、実際に普及したのは1981年の「IBM PC」からである。

一方、従来主流であった企業などのコンピュータは「オフィス」にあるコンピュータとして「オフィスコンピュータ」(office computer)、略して「オフコン」。
もしくは「ビジネスコンピュータ」(business computer)などと呼ばれた。
その後、個別用途で高性能なものは「ワークステーション」(work station)と呼ばれるものも登場した。
大型コンピュータでも特に大規模のものは「メインフレーム」(mainframe)と呼ばれた。
近年「オープン系」(open system)と呼ばれる「サーバ」(server)に移行したシステムもあるが、「メインフレーム」も見直されており、その系譜は継続している。
また、特に演算処理を重視したものは「スーパーコンピュータ」(super computer)と称されるようになった。
有名なものでは1970年にCray社が発表した「Cray-1」や2020年に試験運用が始まった「富岳」などがある。

その後、「パソコン」は1980年代に日米を主導として大きく発展した。
その中から持ち運びが可能となった「ラップトップ」(laptop)や「ハンドヘルド」(handheld)、「ポケコン」(pocket computer)が誕生した。
「ラップトップ」は小型化を得意とする日本市場において「ノートパソコン」(notebook computer)として発展した。
現在では従来の据置型は「デスクトップ」(desktop personal computer)として定義している。

21世紀に入ると技術の発展により、コンピュータ全体がディスプレイ内に収まる「タブレット」(tablet)が誕生した。
また「スティック」(stick)型や「ウェアラブル」(wearable)型など、様々な形態が登場している。
「タブレット」が携帯電話と融合したものは「スマートフォン」(smartphone)となり、一般にはコンピュータとあまり意識されずに浸透している。

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・記憶装置にみる技術の発展

記憶装置には大きく分けて、「主記憶装置」と「補助(外部)記憶装置」がある。
主記憶装置は「メモリ」(memory)という半導体メモリなどで構成されたものである。
半導体メモリは仕組みや容量は変わっているが、基本的なものは変化していない。
(現在は「キャッシュ」(cache)と呼ばれる一時記憶装置も併用されている)

一方、補助記憶装置は技術の進歩によって大きく変化し、淘汰と開発の歴史が繰り返されている。
当初は磁気テープ媒体が主流であり、大型のシステムでは「オープンリール」(open reel)が利用された。
個人ユースでは音楽用の「カセットテープ」(cassette tape)を流用したものが使われてきた。
磁気テープはその性質上、「ランダムアクセス」(random access:呼び出しが自由に設定できる)ではなく、「シーケンシャルアクセス」(sequential access:呼び出しは順番になる)となる。
また磁気を用いた記憶方式であるのと、媒体の素材が「テープ」であることにより保管性には弱点があった。
機械的にもあまり高速化はできず、大容量は保存できるが、速度には問題があった。
(後に速度面を向上させた「ストリーマ」(streamer)が登場しデジタル化したことにより、大容量のバックアップ用途などに用いられた)

「ランダムアクセス」が可能なメディアとして登場したのが「磁気ディスク」である。
メディアが交換できるものとして、最初に普及したのが「フロッピーディスク」(floppy disk)である。
8inchのものが最初に登場し、後に5.25inchが登場した。
これらは「floppy」という名前の通り、「柔らかい」保護ケースで保護されていた。
その後、外部が比較的固いプラスチックで覆われた3.5inchや3inchのものが登場した。
容量は当初80KB程度だったが、記憶方式の改良により徐々に増えていき、約1MB程度のものが標準となった。
フロッピーディスクは長い間、コンピュータの記憶媒体として使用されていくことになる。

フロッピーディスクはシークに時間がかかり、アクセス速度は決して速いとは言えなかった。
そこで読込速度を重視した磁気ディスクとして「QD」(quick disk)が登場した。
容量は片面64KB、両面合わせて128KBとあまり大きくはなかったが、登場当初は十分な容量とされていた。
特徴としてはレコードのようにトラックが1本だけ存在しており、「ランダムアクセス」はできない代わりに全体のロード時間が8秒と高速だった。

任天堂「ファミリーコンピュータ」の「ディスクシステム」に採用されたのを始め、シャープ「mz-1500」で標準装備となった。
当初は好調に見えたがすぐにROMの容量が大規模化していったのと、他のメディアが普及していったためこれ以上の発展はなかった。
他にも「Zip」などもあったが、新たなメディアの登場で普及はしなかった。

光ディスク(optical disc)はコンピュータの性能向上により、扱うデータの容量が増大していったのを解決するものとして登場した。
当初は主に音楽・映像用として用いられた。
(LD(laser disc)やCD(compact disc)など)

1985年になると、光ディスクであるCDのデータ対応型である「CD-ROM」が登場した。
その後1989年には「CD-R」が発売された。
CD-Rは「ライトワンス」(write once)であったが、1997年には複数回書込が可能になった「CD-RW」が商品化された。
CDの容量は最大700MBである。

1996年に製品化された「DVD」(digital versatile disc)は当初から「ライトワンス」である「DVD-R」が対応していた。
DVD-Rは最大片面4.7GBで、両面使用すると9.4GBまで使える。
ただ、DVDはその規格が乱立し、ユーザの混乱を招いた側面もある。
(DVD-ROM/DVD-R/DVD-RW/DVD-RAM/DVD+R/DVD+RWなど)

他にも「PD」(phase-change disc:容量650MB)やLDの音声領域にデータを記録した「LD-ROM」が登場した。
LDの競合相手だった「VHD」(video high density disc)も登場したが、どれも大きく普及することはなかった。
(LD-ROMやVHDはMSXやゲーム機で対応したケースがある)

DVDの後継として「HD DVD」(high-definition...)が登場したが、規格競争に敗れ「ブルーレイディスク」(BD:blu-ray disc)が後継となった。
BDの書換型として「BD-RE」(... rewritable)が登場し、その容量は最大50GBまでとなった。

一方、1985年には光磁気ディスク(magneto-optical disk)である「MO」が登場した。
フロッピーディスク同様、3.5inch/5.25inch/8inchというサイズの規格がある。
(一般的には3.5inchのものが主流であった)
MOは専用のハードケースに格納されており、容量はフォーマット仕様などで異なる。
主な容量は128MB/230MB/540MB/640MB/1.3GB/2.3GBである。
フォーマット仕様によってはハードディスクと同じように扱えるのが特徴であった。
(MD(minidisc)は音楽用光磁気ディスク規格である)

磁気ディスクの中でメディアが固定されているものは「ハードディスク」(hard disk)と呼ばれる。
ハードディスクはその登場から容量を増大させており、数MBだったものが現在は数TBが主流となっている。
ただ構造上衝撃などに弱く、また部品の劣化などで連続使用での寿命は長くても10年程度であり、バックアップの必要性がある。
ただ、その容量は交換可能なディスクの比ではなく現在も主流の記憶媒体の一つである。

ディスク系メディアの不安定さや速度面を補うために登場したメディアが「フラッシュメモリ」(flash memory)を使ったものである。
最初は「USB」(universal serial bus)バスに挿して使用する「USBメモリ」として登場した。
2008年頃から一般向けに「SSD」(solid state drive)として、市場に流通し始めた。
SSDのメリットはデータ転送速度が高速であること、機械的な可動がないため耐衝撃性があることがある。
デメリットとしては書換可能回数がディスク系より少ないことと、通電しないと10年以内にデータが消えてしまうことである。
また故障した場合はハードディスクと違い、データの復旧はほぼ不可能であるという点も大きなデメリットである。
SSDは容量に対しての値段がハードディスクより高いため、全てを置き換えるということには至っていない。
(メインとしてSSD、バックアップやデータ用としてHDDを併用する形が多くみられる)

このように補助記憶装置は技術の進歩で随時更新されており、今後更に使いやすいものが登場するだろう。

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・入出力装置にみる技術の発展

コンピュータを人間が直接使用するのに必要なものとして存在するのが入出力装置である。
つまり、データなどを入力するための入力装置、データを出力するための出力装置に分けられる。

入力装置としての代表が「キーボード」(key board)である。
これはコンピュータ登場当初から基本は変わっていない。
それどころか登場以前から「タイプライタ」(type writer)として存在していた。
そのため、キーボードの文字配列は「QWERTY」と呼ばれる配列が現在でも主流となっている。
(他にも「DVORAK」配列などいくつか登場したが、結局主流にはならなかった)
接続コネクタは専用の物から「IBM PS/2」規格などを経て、現在はUSBが主流である。
(「PS/2」の利点として同時に押下できるキーが無制限であることが挙げられるため、ゲーミングキーボードでは重宝される→USBはその性質上最大6個までである)

また、補助入力装置として「マウス」(mouse)や「トラックボール」(track ball)、「ペン」などがある。
これらも登場当初から大きく変わっていない。
音声認識などで入力する装置も存在するが、結局一般的にはこれらを超えるものが登場していない。
(音声認識は技術の進歩によりかなり向上しているが、多言語対応や方言や癖に対する対応という点ではまだ完全には至っていない)

一方、出力装置としてはその用途別に「ディスプレイ」(display)、「プリンタ」(printer)、「スピーカー」(speaker)などが挙げられる。
ディスプレイは技術の進化が最も激しくみられる出力装置である。
当初はブラウン管方式のモノクロディスプレイやグリーンディスプレイが主流であったが、カラーの登場で扱える色がデジタル8色となりそこから色の発色数が増えていった。
(8色なのは光の三原色[RGB]を明度を変えずに混ぜるとできる色が白・黒を含めて8色になるからで、だから青色LEDができるまでフルカラー表現がLEDではできなかった)
その後技術進化の結果「液晶」(liquid crystal)が主流となり、更にLEDや有機ELといった新素材を基にしたディスプレイが登場している。
接続方式も映像信号が変化していく過程で様々なコネクタが登場した。
(現在主に使用されているものとしてVGA(video graphics adapter)、DVI(digital visual interface)、HDMI(high-definition multimedia interface)などがある)

プリンタは文字を印刷するための装置である。
当初は「ドットインパクト」(dot impact)式といった物理的に印字するものや「サーマル」(thermal)式のように熱を利用したものが主流であった。
印字に「ペン」を用いた「プロッタ」(plotter)式というのも、低価格帯や製図用などとして登場していた。
この頃はパラレル(parallel)接続である「セントロニクス」(Centronics)社準拠と呼ばれる「IEEE 1284」形式が一般的であった。
現在はUSBや無線接続を介したLAN接続が一般的である。
(変わった使い方としてはパラレル接続のゲームコントローラというものがある→USBの反応速度が遅いというゲーマーの不満から生まれたものである)
(現在はUSB規格自体の発展やドライバの見直しで反応速度は向上している→ポーリング間隔など)

近年主流となったのは「インクジェット」(ink jet)式である。
インクジェットの概念はサーマル(熱転写)式よりも古く1950年代には提唱されていた。
しかし、技術的に実現するのが難しく本格的に一般向けとして登場したのは1980年代である。
インクジェットは比較的安価である反面、インクそのもののランニングコストの問題がある。
そこで「レーザー」(laser)式も発展していった。
レーザー式は「コピー機」と同じ原理であり、当初はそのランニングコストに問題があったが、技術的な進歩によりその格差は縮まっている。
(ただ現在は環境問題の側面からペーパーレスが浸透してきており、「ネットプリント」(network print)が普及してきたこともあり、個人がプリンタを所有する必要性が薄くなってきたという実態もある)

最近は「3Dプリンタ」という全く新しい概念も登場している。
従来のプリンタは文字や画像を印刷するのが目的であったが、3Dプリンタは立体的な造形を作り出すことが目的である。
今後の進化が楽しみな装置であろう。

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・通信装置にみる技術の発展

通信装置はコンピュータ同士を有線、もしくは無線で接続してデータをやり取りするための装置である。
直接接続するものと通信回線を用いるものがある。

現在直接接続するものは「LAN」(local area network)規格でケーブルで直接結線する方式が主流である。
「イーサネット」(ethernet)と呼ばれるものが現在の有線LANの規格である。

一方、通信回線を経由するものは技術の発展が大いに関係してきた。
コンピュータと装置を接続するのは主にシリアル(serial)規格である「RS-232C」が使われてきた。

当初は電話の受話器を直接「音響カプラ」(acoustic coupler)と呼ばれる装置に載せて、音声をデータに変換するというものが用いられた。
その速度は当初300bps(bit per second)程度であった。
(カプラ自体がその後使われるケースが少なくなっていったが、1200〜2400bps程度まで対応するようになり、最終的には28.8kbpsまで対応した製品も登場している)

カプラの後に主流となったのが「モデム」(MOdulator/DEModulator)である。
基本的な仕組みはカプラと変わらないが、回線の信号は「モジュラージャック」(registered jack)でやり取りを行う。
通信速度やプロトコル(protocol)、通信方式は各種存在しており、時代に応じて変化していった。
(1200〜2400bpsだったものが、最終的には64K〜128K程度まで対応した製品も登場している)

その後、回線の信号はアナログからデジタルになり、電話回線から「インターネット」(the internet)回線へと転換されていった。
コンピュータとの接続もRS-232C経由ではなくLAN経由となった。
そこでは「TCP/IP」群と呼ばれるプロトコル群により、1vs1ではなく世界中のサーバと結ばれるようになった。
接続手段も有線だけではなく無線規格も発展していき、現在では携帯電話網も含めた無線接続が主流となりつつある。
(携帯電話回線と接続するものやADSL、VDSL接続も「モデム」である)

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「disc」は光学式、「disk」は磁気を示す。

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