21世紀に入って初めて人類が可視化に成功した謎に満ちた天体「ブラックホール」。
ではブラックホールはどのようにして宇宙に誕生するのだろうか。
大きく分けてブラックホールには2つの種類がある。
まずは銀河中心部にあるとされる大質量のものである。
これはまだどのようにして形成されるのかが不明で、あくまでも仮説の域を脱していない。
もう1つは恒星がその一生の最後に至るとされるものである。
ただ全ての恒星がブラックホールになるわけではない。
それは質量の違いから生じる。
まず太陽質量の1/2程度の軽い恒星(赤色矮星)の場合はどうなるのか。
この場合は、核融合反応 ※1で水素を使い切った段階でそのまま白色矮星になると推定されている。
なぜ推定なのかというと、軽い恒星の寿命は現在の宇宙年齢を遥かに上回る。
(短くて1000億年、長いものでは10兆年を超えるとされる)
よって現時点でそのような恒星は存在しないと思われるからである。
そして、このような軽い恒星は水素を使い切ってもヘリウム核融合が起きるほどの高温ではない。
そのため、白色矮星としてその一生を終えるのではないかとされている。
では、太陽質量の1/2〜8倍程度だとどうなるのか。
このような恒星の場合、1H(水素)→4He(ヘリウム)→12C(炭素)などというように核融合が進んでいく。
この段階で、まずは変光星や赤色巨星と呼ばれる段階となる。
そして最終的には周りのガスを放出して白色矮星から黒色矮星というように変化していくとされている。
黒色矮星とはもはや核融合を維持できないくらい軽い天体である。
更に白色矮星の寿命を考えるとこれもまた、まだ宇宙には存在していないだろうといわれている。
(太陽はここに当てはまるので大体50億年後には赤色巨星となって、今の地球軌道くらいまで大きくなってるかもしれないから、それまでには第2の地球探さないとね)
太陽質量の8〜10倍程度の場合は、12Cでも核融合反応が起き、16O(酸素)・20Ne(ネオン)・23Mg(マグネシウム)などが生成される。
反応が進むと中心核の圧力が一気に下がって重力崩壊を起こす。
そこで重力崩壊が発生し、超新星爆発を引き起こす。
そのときに中心核が残り、中性子星となる。
中性子星は極めて高密度の天体であり、その表面からの脱出速度は光速の1/8〜2/3程度と言われている。
更にそれ以上の質量の恒星になると16O→28Si(ケイ素)から56Fe(鉄)に至る核融合反応が起きる。
56Feは安定核種 ※2でありこれ以上の核融合は起きない。
(それぞれの反応はもう少し複雑なのだが、ここではそこまでは説明しないので興味があれば調べてもらいたい)
安定してしまった中心核の56Feの周りにそれまでの過程を経ている最中の原子核が層をなす。
こうなると、恒星表面付近にのみ1Hが存在するような状態となる。
このような場合、最後に鉄の光崩壊 ※3という現象を起こす。
その結果重力崩壊を引き起こし超新星爆発が起こるのだが、残った中心核は中性子星やクォーク星、そしてブラックホールに至るとされている。
中心核が太陽質量の3倍以上となるとブラックホールになるのではないかと言われている。
例えば元の恒星質量が太陽質量の30倍以上であればブラックホールになる可能性が高い。
このように恒星はその質量で一生が決まる。
ただ、これらは全て理論段階であり、実際のブラックホール誕生を捉えたわけではない。
今後観測機会があればこれらの推論が正しいのか、そうではないのかがわかる時が来るであろう。
一天文ファンとしてはその瞬間に出会えるか、興味が尽きない。